セオリーには反するが逆張りではない、プロジェクト/プロダクト両輪の組織体制とは
こんにちは、ACESの久野(@nokuuun)です。ACESのメンバーの”声”を伝えるPodcast『Voice of ACES』、第2回目は創業メンバー6人の中から代表取締役の田村さん、取締役の與島(よじま)さん、共同創業者の西條さんをお呼びし、ACESの組織体制や事業戦略について話しました。
・プロジェクトとプロダクトを両輪で伸ばすための戦略
・大型の資金調達を行わなかった理由
・これからどんな組織にしていきたいか
などをざっくばらんにお話しています。(*本記事は、Podcastの書き起こしではなく、内容を読みやすくまとめ直したものになりますので、音声上の表現とは異なる部分があります。)
【参加者のプロフィール】
田村 浩一郎:代表取締役。東京大学工学系研究科 松尾研究室 博士課程3年目
與島 仙太郎:取締役。DXパートナー事業(Delta)の統括を行っている
西條 真史:執行役員。アルゴリズムソフトウェア事業(Sigma)の統括を行っている
プロジェクト<=>プロダクト 両輪の組織戦略とは
久野「ではまず3人の自己紹介からお願いします」
田村「こんにちは、ACES代表取締役の田村です。松尾研博士課程3年目で、再来週に*予備審査を控えています」 (予備審査:博士論文としての審査に値するかどうかを諮る会)
與島「與島です。取締役COOとして、企業とDXプロジェクトを行う『Deltaチーム』の統括をしています」
西條「西條です。共同創業者6人のうちのひとりで、アルゴリズムを組み込んだソフトウェアプロダクトの開発のPdM・責任者をしています。アルゴリズムソフトウェア事業のことをACESでは『Sigmaチーム』と呼んでいます」
久野「今日は組織体制をテーマにお話したいと思ってるんですが、先日ACESに入社された方と『ACESっていわゆるベンチャー感があまりないよね』という話になったので、その辺りについても話せればと思っています。まずとっかかりとして、いまの組織の体制について概要教えてもらっていいですか?」
田村「そうですね、我々ACESは4部署制で動いています。まず一つ目が『Delta』。これはお客さんの事業に入りこんで、『その業界/事業がAIでどのような未来を描くのか』という問いを立てて、お客さんとDXをすすめる部署です。2つ目は、西條が言っていたように、アルゴリズムが搭載されたソフトウェアをSaaS展開していく部署で『Sigma』と呼ばれるチーム。さらには『Delta』『Sigma』のアルゴリズム中心に技術の基盤を整えブリッジしてく『Dev』、そして組織の基盤を整える『Corporate』の4部署で構成されています」
久野「與島さんDeltaチームについて補足ありますか?」
與島「田村から話したように、DeltaではAI・アルゴリズムが組み込まれた状態の未来をまず描くというところで、クライアントの皆さんと議論を重ねます。取り組みが決まった後は、社内に蓄積されているアルゴリズムを使って、よりその業界に特化したアルゴリズムにできないかをPDCAを回して社会の価値につなげるところまで遂行していく組織です」
久野「業界ごとに縦にDXしていくイメージですかね?」
與島「そうですね。プロジェクトは本当に伴走している感じで、その企業・業界が中長期経営戦略上何をしたらよいと考えているのか、どこがボトルネックになっていて何をアルゴリズムで解決できるかを話し合いながら進めています」
久野「続いてSigmaチームについても教えてください」
西條「Sigmaチームはひとことでいうと、プロダクトを開発するチームです。Deltaチームのプロジェクトを通して得られるような一次情報や気付き、業界知識、さらには社内に資産として溜まっているアルゴリズムの技術基盤を用いて、『人の働き方に余白をつくる』というコンセプトに沿ったプロダクトを汎用性の高い形で展開することを目指す事業部です」
久野「一般的なスタートアップでは、プロダクトとプロジェクト両輪でやっているところはあまり聞かないと言うか、『受託が忙しくて自社開発ができません」』みたいなことをよく聞きますが、そもそもプロダクト事業を本格的に考えだしたのっていつごろからなんですか?」
田村「そうですね、創業後にDXプロジェクトをやっていこうという方針が決まった当初からプロダクトは視野に入れていました」
與島「創業して1年半後には確実に考えていたと思います」
久野「なるほど、プロダクトを見据えて、となるとプロジェクトの取り方とかにも工夫があったのかなと思うのですが與島さんどうですか?」
與島「そうですね、最初からゆくゆくはプロダクトをする、アルゴリズムで事業をすると考えていて、個別の案件を獲得するために会社を作ったわけではないと話していました。なので、プロジェクトをするなら技術が蓄積されて個別最適にならないようにしたり、技術開発したものをパッケージとして残した上でプロダクト開発にいかしたり、を念頭においてプロジェクトを進めていました」
久野「その辺のカルチャーは、Deltaに限らず社内全体でも意識していることかなと思ってて、逐一ドキュメント化するとか個人の知見を属人化させないように仕組み化するとか、そういった文化は組織全体としてもあるかもと思いました!」
セオリーには反するが逆張りではない、資金調達に頼らない投資サイクル
久野「私は2019年の5月に與島さんの紹介で最初は業務委託として入って、早2年半経つのですが、驚いたこととして初期から黒字経営を維持してたところがあります。(前職も大学発ベンチャーにいたのですが)ベンチャーって*大型の資金調達をして、その資金を元に投資をしていくというところが多いかと思うのですが、なぜその戦略をとらなかったんですか?」
* ACESは2017年11月の創業以降、2019年5月および2020年12月の2度資金調達を行った。前者は数千万円規模で額は非公開、後者は3.2億円と、フェーズからすると比較的大規模ではない資金調達を行っている。
田村「まず戦略的な理由でいうと、資金よりも業界で得られる知見、ノウハウ、データ、アルゴリズムの方がはるかに価値があったからです。それらをキャッシュを得ながら獲得する術(すべ)と戦略と人が揃っていたので、資金で人を増やす必要をあまり感じませんでした。
AIの事業においては、エンタープライズの事業をよく理解した上で担っている機能をブレークダウンし、データを集めて業界構造を変える動きが重要なのですが、ある程度業界の中に入り込まないとわからないことがたくさんありますよね。わかってたとしてもデータとアルゴリズムを作る能力・体力がない。それって資金を調達してできることではないと思っていたし、資金以上に仕組み化や採用の方がレバレッジが効いてたので、外部の資金というよりは自分たちで稼いで再投資するというサイクルを回すのに注力していました。
あとはこれは私の考え方なんですが、赤字を掘れば即ちJカーブ描いて黒字になる、というわけではないと思っています。『粗利≒世の中に提供した価値で、利益≒社会に残した価値』だと考えており、これを無視してビジネスをやるものではないとの信念を持っているので、資金調達に便乗して不必要なアピールはしたくないというのが個人的な思いです」
西條「情報感度はそれなりに高い人が集まってたので、一般的なスタートアップのセオリーを知らずにやってたというわけではなかったです。王道の戦略をある程度理解した上で、AIという武器を用いて経営していくにはどういう戦略を取るのがいいのかは結構考えていたし、当時考えたことがそのまま戦略として今も残っているところはありますね」
田村「誰かに『これするといいよ』と言われたことを思考停止でやらないのは大事だと思います」
今後の成長戦略 未来に対する『問い』にどう向き合うか
久野「最後に各チームの成長戦略や、どういう人に来てほしいか教えて下さい」
與島「Deltaの組織が今どういう状態かというと、ひととおりクライアントの皆さまとアルゴリズムで何をすべきかを議論してプロジェクトを実施するという1サイクルが仕組みとして回り始めた状況です。これを線形に成長させるのはもちろんのこと、来期一年としてはここからどれだけプロダクト化、事業化に拡大していけるかに注力したいと考えています。アルゴリズムできちんと事業をつくれるためのプロジェクト実行、およびその組織づくりにフォーカスしたいと考えています。
そのため、アルゴリズムを使って将来の事業の状態を正しく作るというところに責任を持ってやっていきたい人にぜひ来ていただきたいと思っています。」
久野「カルチャー的にはどんな人がマッチしそうですか?」
與島「そうですね、Deltaに限らずではあるのですが『Gemba First』を特に大事にしたいです。一次情報は何でそこにある問題は何か、正しい状態が何でそのような状態の時オペレーションは適切に回るのか、それが出来ている状態をユースケース含めてイメージできるのか、そういう事業が10年後当たり前になっていると言えるか、等々……にこだわり抜ける人に来ていただきたいと考えています!」
久野「Sigmaの戦略や、来てほしい方についても教えて下さい」
西條「Sigmaは社内に溜まっている技術資産を武器にして人の働き方を変えていく、という文脈で、プロダクトを通して大きなインパクトを与えたいと思っています。今後の戦略でいうと、今まさに仕込んでいる『営業における商談情報の属人化/ブラックボックス化を解決するプロダクト』である『ACES Meet』を成長させていくフェーズです。Sigmaの特徴としては(0→1という点で)よりスタートアップらしさがあるのかなと思っていて、技術の可能性を信じつつもユーザーとか企業のペインに泥臭く向き合える方に来ていただきたいと思っています!」
久野「全社の組織としての戦略はどうでしょうか?」
田村「ACES(エーシーズ)という名前は、元々ポーカーの強い手札で、かつAから始まればAIの企業で順番的にも上にいくしいいじゃん!という話で決めたのですが、今になって思うとすごくいい名前だなと思っています。
僕新しいメンバーが入るたびに友達にめちゃくちゃ自慢してるんですよ、この人はこういう人で、こんなところがすごくて!みたいに(笑)。みんながプロフェッショナリティ持ってて、かつ会社にある資産、アルゴリズムやデータを使って未来に対する問いを立てながら熱量を持って取り組んでいくチームにしたいなと常々思っています。会社には面白い問いがいろいろあるんですよね、この業界はここだな、とかこの部分のデータとアルゴリズムを抑えたプレイヤーが勝つな、とか。当事者としては意識してる人たちも多いし、外から見えないけど変わろうとしているポイントたくさんあるので、そこを我々で変えていくぜ、が出来たらいいなと思っています」
久野「メンバー個人個人でも、自分のミッションや問いを持っている人がすごく多い印象を持っています。例えば私だと、学部が理系で院から文転して科学と社会をどう繋げるかみたいなところに興味があって、アカデミアで育てられた技術シーズをスタートアップ通じてどう社会に還元できるかみたいな部分を問いとして持ってます。同じように、各人異なるミッションを持ちつつも、ACESの方向性やミッションとはベクトルが合えば強い組織になるんじゃないかなと思っています」
與島「志を持ってる人たちは多いと思うし、そういう人たちに来てもらえると楽しいし、わくわくしますね!」
久野「というわけで、お時間きましたので、Podcastの感想や、次これ聴きたい!など要望有りましたらご連絡いただけると嬉しいです」
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